『深層のチャロアイト』レビュー 記憶をたどる短編ダウジングRPG

小さな魔女と、無口なゴーレム。二人きりで地下深層へ潜っていき、失われた“記憶”と向き合う。『深層のチャロアイト』は、そんな絵本のようなインディー発のアクションRPGです。
ダウジングで罠や階段を“一瞬だけ”可視化し、それを覚えながら進んでいく探索パートは、プレイヤーの短期記憶がそのままゲームプレイに直結する独特の手触り。道中では、チャロアの過去を描くイベントや断片的な記憶が少しずつ明らかになり、「次の階層を覗きたくなる」引きの強い構成になっています。
プレイ時間はおおよそ3〜6時間ほどで、週末に遊びきれるボリューム感。価格も控えめで、ストーリー重視のインディー作品が好きな方や、「短くても心に残る物語」を求めている方にぴったりのタイトルです。
本記事では、そんな『深層のチャロアイト』のゲームシステムや魅力をまとめてご紹介していきます!
『深層のチャロアイト』とは?
『深層のチャロアイト』は、個人開発者・三木よんた氏が手がける“瞬間記憶アクションRPG”です。PC向けタイトルで、Steamで配信されており、3〜6時間ほどでエンディングまで遊べるコンパクトなボリューム感が特徴の1本です。
物語の主人公は、紫の瞳を持つ小さな魔女・チャロア。10歳の誕生日を迎えたある日、気がつくと彼女は地下深層にいて、「どうしてここにいるのか」という記憶を失っています。覚えているのは、“必ず最深部まで辿り着く”という約束にも似た言葉だけ。チャロアは相棒のゴーレムとともに、地下のさらに深い場所へと潜っていきます。
ゲームとしては、ダウジングで罠や階段、アイテムなどを“一瞬だけ”可視化し、それをプレイヤーが記憶しながら進む探索アクションがメイン。
道中でチャロアの「記憶の断片」を集めていくことで、彼女の過去や、この地下世界の真相が少しずつ明らかになっていきます。短いながらも、記憶と選択をテーマにした物語をじっくり味わえる作品です。
派手な演出でガンガン盛り上げるタイプではなく、静かにじわじわと「この子はいったい何を抱えているんだろう?」とプレイヤーの心を惹き込んでいきます!
ゲームシステム1:ダウジングで罠や階段を“瞬間記憶”しながら進む探索アクション

本作の探索は、チャロアのスキル「ダウジング」を中心に進んでいきます。フィールド上には、ダメージを受ける罠や敵の攻撃範囲、次の階層へとつながる階段、回復や強化に役立つアイテムなどが隠れていますが、通常の状態では一切見えません。
ここでダウジングを使うと、隠れていた要素が一瞬だけマップ上に浮かび上がり、その短い時間のあいだに「どこが危険で、どこが安全なのか」を頭の中に叩き込んで進んでいくことになります。
もちろん、表示はすぐに消えてしまうので、「さっきの罠はここだったはず」「階段はこのライン上にあったな」と、プレイヤー自身の“瞬間記憶”がそのまま攻略のカギになります。
慎重に進めばダメージを最小限に抑えられますし、慣れてくると「ギリギリのところを駆け抜けてタイムを縮める」といった攻めた動きも可能です。
記憶と判断力を使いながら一歩一歩ルートを切り開いていく、ちょっとパズル的な緊張感が味わえる探索アクションになっています。
ゲームシステム2:チャロアの記憶を集め、物語とともにスキルが解放されていく成長要素

『深層のチャロアイト』では、レベルアップやステータスの数字だけでなく、「チャロアの記憶」を集めること自体が成長システムの一部になっています。
ダンジョンの各所には、チャロアの過去を映し出す“記憶の断片”が点在しており、特定の地点まで進むことでイベントシーンが発生。そこで描かれるのは、チャロアが地上でどんな日々を過ごしていたのか、誰とどんな約束を交わしたのか、といった、彼女の心の奥に眠っているエピソードです。
これらの記憶イベントは、単なるストーリー解説では終わりません。記憶を取り戻していくことで、新しいスキルが解放されたり、既存アクションの使い勝手が良くなったりと、ゲームプレイ面にも変化が生まれます。「過去を思い出すこと」が、そのままチャロアの“今”の力につながっていくイメージですね。
そのため、プレイヤーは「先のフロアに進んで強い装備を取りたい」というRPG的な動機に加えて、「次の記憶を見て、この子に何があったのか確かめたい」という物語的な動機でも前へ前へと進んでいくことになります。
成長とストーリーがきちんと噛み合っているので、短いプレイ時間の中でも満足度の高い“旅の感覚”を味わえる仕組みです。
ゲームシステム3:カケラを集めてゴーレムをカスタマイズするビルドシステム

地下を進んでいくと、フィールド上に「カケラ」と呼ばれるアイテムが落ちています。これはゴーレムの潜在能力を引き出すための素材で、集めたカケラをセットすることで、HPや攻撃力、防御力、ダウジング関連の性能などを強化していくことができます。
どの能力を伸ばすかはプレイヤー次第。罠や敵の攻撃が不安なら耐久寄りの構成にして「とにかく死ににくいゴーレム」にするのもアリですし、手早く敵を倒したいなら攻撃面を伸ばして「サクサク片付けるアタッカー型」に寄せるのもアリです。ダウジングの使い勝手を優先して、探索特化のセッティングにする遊び方もできます。
ビルドと言っても、複雑な数値管理や膨大なスキルツリーがあるわけではなく、「今の自分のプレイスタイルに合わせて、少しずつゴーレムの能力を決めていく」感覚に近いシンプルさです。
だからこそ、短いプレイ時間の中でも「この周はこういう方針で行こう」と考える余地があり、チャロアとゴーレムが一緒に強くなっていく手応えを気持ちよく味わえるビルドシステムになっています。
ダウジングで“一瞬だけ”見えた情報を頼りに進み、失われた記憶を取り戻しながら、ゴーレムのビルドで手触りを調整していく、この3つのシステムが、きれいにひとつの体験としてまとまっていると感じました。
『深層のチャロアイト』の面白いポイント
面白いポイント1:2つの“記憶”がテーマになったゲームデザイン

『深層のチャロアイト』で印象的なのは、「プレイヤーの記憶」と「チャロアの記憶」という2つの“記憶”が、ゲーム全体の軸になっている点です。
プレイヤー側では、ダウジングで一瞬だけ可視化された罠や階段、アイテムの位置を覚えながら進む必要があります。「さっきこの辺に罠があった」「階段はこのライン上だ」と、自分の短期記憶を頼りにルートを組み立てていくので、操作しているあいだは常に頭の中でマップを更新し続けることになります。
一方で物語側では、地下の各所に落ちている“チャロアの記憶”を拾い集めることで、彼女が地上でどんな日々を過ごしていたのか、なぜ最深部を目指しているのかが明らかになっていきます。プレイヤーが進めば進むほど、チャロア自身も過去を思い出していく構造になっているのがポイントです。
このように、「プレイヤーが今この瞬間を覚えること」と「チャロアが過去を思い出すこと」が並行して進むシステムになっているため、遊んでいるうちに“記憶”というテーマが自然と身体に染み込んでくるゲームデザインになっています。
面白いポイント2:小さな魔女とゴーレムの関係性が光る3Dイベントシーン

『深層のチャロアイト』は、登場キャラクターの数こそ多くありませんが、「小さな魔女チャロア」と「無口なゴーレム」というメインのふたりに自然と目が行く構成になっています。
イベントシーンは3Dモデルで描かれ、チャロアの表情や仕草と、黙って彼女を運ぶゴーレムの対比がわかりやすく表現されています。ゴーレムは終始しゃべらず、感情を露わにするような演出もほとんどありませんが、常にチャロアを肩に乗せて運び続けるその姿から、「無言の頼もしさ」や「守ってくれている存在」であることが伝わってくるのが印象的です。
一方のチャロアは、不安を抱えながらも最深部を目指す決意や、記憶を取り戻していく中で揺れ動く気持ちが、短いイベントの積み重ねで描かれていきます。
ふたりの関係がドラマチックに語られるわけではないものの、「言葉は少ないけれど、確かに一緒に旅をしている」という距離感が、3Dイベントを通してじんわりと伝わってくるポイントです。
面白いポイント3:3〜6時間で遊びきれるコンパクトなボリューム

『深層のチャロアイト』のプレイ時間は、おおよそ3〜6時間ほど。寄り道の量やプレイスタイルにもよりますが、「平日の夜に少しずつ進めて週末にエンディングまで到達する」「休日に腰を据えて一気にクリアする」といった遊び方がしやすい、ちょうどいいボリューム感になっています。
昨今は遊びきる前に積んでしまう大作も多いなかで、「最初から最後まできちんと付き合える長さ」であることは、むしろ大きな魅力のひとつ。シナリオも、短いプレイ時間の中にチャロアの過去や選択、プレイヤーの記憶体験がぎゅっと凝縮されているので、クリア後には“短編映画を1本観終わった”ような充実感が残ります。
要所ではボス戦も挟まれており、罠回避や探索中心の静かな緊張感から一転して、攻撃パターンを見極めながらスキルやカケラ強化を総動員して挑む、メリハリのあるバトルが楽しめます。
価格も控えめで、PCのスペック面のハードルも高くないため、「ちょっと変わったインディーRPGを1本試してみたい」「今週末は短くても心に刺さるゲームを遊びたい」というときに手に取りやすいタイトルです。
少女と記憶を巡る短編RPGの冒険に出かけよう

『深層のチャロアイト』は、ダウジングで一瞬だけ姿を現す罠や階段を“覚えながら”進んでいく探索アクションと、失われた記憶を少しずつ取り戻していく物語が重なり合った、コンパクトな短編RPGです。プレイヤーの短期記憶がそのままゲームプレイに直結し、チャロア自身も過去を思い出していく。そんな二重構造のデザインが、本作ならではの手触りを生み出しています。
カケラでゴーレムをカスタマイズするビルド要素や、要所で挟まるボス戦など、システム面はシンプルながらもメリハリがあり、「あともう1フロアだけ潜ろう」とつい続けてしまう中毒性も十分。3〜6時間ほどで遊びきれるボリュームなので、忙しい人でも週末や空いた時間に“1本まるごと”味わえるのも嬉しいところです。
静かだけれど心に残る物語をゲームで体験したい人、記憶や選択をテーマにしたインディー作品が好きな人は、ぜひ小さな魔女チャロアとゴーレムと一緒に、地下深層の“たからもの”を探す旅に出てみてください。
あなたが辿り着く結末もまた、ひとつの大切な“記憶”として残るはずです。
派手な演出や膨大なやり込み要素で押してくるタイプではなく、「覚える」「思い出す」「選ぶ」という、人間のごくシンプルな感覚にそっと寄り添ってくる作品です!

